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京都地方裁判所 昭和60年(わ)732号 判決

本籍

京都市伏見区淀本町二〇八番地

住居

京都府八幡市橋本堂ヶ原四〇番地

団体職員

西村昭和

昭和七年一月二日生

右の者に対する所得税法違反、相続税法違反被告事件につき当裁判所は検察官山田廸弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇万円に処する。

右罰金を完納しないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

右懲役刑については、この裁判確定の日から三年間その執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、全日本同和会京都府・市連合会八幡支部長であるが

第一  西村博、西村博文、山田廣子、同連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫及び同連合会事務局次長渡守秀治らと共謀の上、右西村博、同西村博文、同山田廣子の実父である西村正明が昭和五七年五月二四日死亡したことに基づく西村の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右西村博の相続財産にかかる実際の課税価額が六、二一六万五、〇八七円で、これに対する相続税額は二、〇七〇万四、二〇〇円であり、右西村博文の相続財産にかかる実際の課税価額が二億五、〇九五万八、四六七円で、これに対する相続税額は九、二〇〇万二、二〇〇円であり、右山田廣子の相続財産にかかる実際の課税価額が七、三四三万四、一九四円で、これに対する相続税額は二、六八九万二、九〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右西村正明が有限会社同和産業(代表取締約鈴木元動丸)から二億七、五〇〇万円の債務を負担しており、右西村博においてそのうちの四、〇〇〇万円を、右西村博文において同じく一億八、五〇〇万円を、右山田廣子において同じく五、〇〇〇万円をそれぞれ承継してと仮装するなどの行為により、同年一一月一七日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署において、同署長に対し、右西村博の相続財産にかかる課税価額が二、二一六万五、〇八七円で、これに対する相続課税は一六一万八、五〇〇円であり(ただし申告書には計算誤りのため課税価額は一、九一五万八四一円で相続税額は一〇八万四、三〇〇円と記載)、右西村博文の相続財産にかかる課税価額が六、六三一万八、四三八円で、これに対する相続税額は一、〇六八万三、一〇〇円であり、右山田廣子の相続財産にかかる課税価額が二、六〇八万八、四六九円で、これに対する相続税額は四〇九万五、一〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右各相続にかかる右西村博の正規の相続税額二、〇七〇万四、二〇〇円との差額一、九〇八万五、七〇〇円を、右西村博文の正規の相続税額九、二〇〇万二、二〇〇円との差額八、一三一万九、一〇〇円及び右山田廣子の正規の相続税額二、六八九万二、九〇〇円との差額二、二七九万七、八〇〇円をそれぞれ免れた

第二  中西仙太郎、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫及び同渡守秀治らと共謀の上、右中西がその所有する京都府八幡市一ノ坪八二番ほか四筆の田を昭和五九年三月五日二億九、五八三万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右中西の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億四、五〇一万二、三〇五円、総合課税の総所得(農業所得)金額は二一万二、〇〇〇円で、これに対する所得税額は三、九四八万四、一〇〇円であるのにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から二億円の借入れをし、その債務について右中西が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年三月二五日に一億三、五〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を破った旨仮装するなどした上、同六〇年三月五日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署において、同署長に対し、右中西の五九年分分譲課税の長期譲渡所得金額は一、〇〇二万、九五五円、総合課税の総所得金額は二一万二、〇〇〇円で、これに対する所得税額は一六八万八、六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額三、九四八万四、一〇〇円との差額三、七七九万五、五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  長谷部純夫の検察官に対する供述調書(謄本、検第42・43号)

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(謄本、検第36ないし39号)

一  山田泰男、西川平(二通)、山田廣子、西村博文(五通)及び西村博(二通)の検察官に対する供述調書(謄本)

一  長谷部純夫の検察官に対する供述調書(謄本、検第44号)

一  鈴木元動丸の検察官に対する供述調書(謄本、検第46号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(謄本、検第15ないし17号)

一  同作成の証明書(謄本、検第18号)

一  京都府八幡市助役作成の戸籍謄本(謄本)

判示第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(謄本、検第32ないし35号)

一  辻村武二、掘尾資三郎(五通)及び中西仙太郎(六通)の検察官に対する供述調書(謄本)

一  長谷部純夫の検察官に対する供述調書(謄本、検第45号)

一  鈴木元動丸の検察官に対する供述調書(謄本、検第47号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(謄本、検第1号)

一  同作成の証明書(謄本、検第2号)

(法令の適用)

判示第一の所為

刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項(刑法五四条一項前段、一〇条、一罪として最も犯情の重い西村博文についての相続税法違反の罪の刑に従う)

判示第二の所為

刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項

刑の選択

いずれも懲役と罰金の併科刑

併合加重

懲役刑につき刑法四五条前前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い相続税法違反の罪の刑に加重)、罰金刑につき刑法四八条二項

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 懲役刑につき同法二五条一項

(裁判官 長崎裕次)

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